一覧へ一覧へ技術インタビュー

4. 分割成形品の加工技術

西出幸博
北海鉄工所 製造部 製造1課 課長

分割成形品の加工に長年携わっている製造部の西出氏に、その技術についてお聞きしました。

矩形(くけい)ベルマウスのことを教えてください。

ダムの取水、放流設備に使われる吞口管です。簡単に申しますと角パイプが先端方向に向けてベルマウス曲線状に広がったものと考えていただければ良いかと思います。四方の隅に関しましては、分割金型成形の加工で形状を造りこむ特殊金型を用います。四面につきましては、折り曲げ加工で鋼板(型切材)をベルマウス曲線状に成形していきます。

難度の高いところで申しますと分割金型成形の加工で一般的には、鏡板のナックルアール部分であれば一方向への送り押し成形加工が可能ですが、当該品については、逆曲げが必要となりますので、一方向への送り押し成形加工ができません。つまり金型内で位置を決めて加圧し、そこから強度の高いプラスチック製の副資材等を用いて形状を造りこむ必要がありますので、一般的な分割金型成形の加工と比較して加工難度が高くなります。

また、分割金型成形に於いて一番重要となりますのが金型で、断面形状、製品の出来栄えは、金型次第となります。型切材料を金型で加圧した際のスプリングバックを見越した金型設計が必要となります。

矩形ベルマウス

原図展開のスペシャリスト(中村)とプレス加工者とが綿密に事前協議を行った上で金型を作り、製品を造り込みます。私たちの中で正寸(ゼロ)を狙う事が基本で、「ゼロを狙った造り込み」を常に考え行動しています。

その造り込みをすべく、原図展開者、プレス加工者、次工程の組立作業者との3者がしっかり嚙み合う事が大切です。また、間接部門ではありますが、管理課ともしっかり連携していくことが必要です。多くの関係者と共同で綿密なやり取りを行いながら推し進めていくところが分割金型成形加工の特色です。

ベルマウス

折り曲げ加工で大変なのはどんなことですか?

折り曲げ加工に関しましては、上下金型で挟み込み加圧することで成形していく加工方法でありますが、加圧すればそのままの金型断面形状アールと同等の断面形状アールがつく訳ではありません。鋼種、材料の厚み、材料寸法、材料のタワミ等を考慮し、成形後に正しい位置で要求に見合った断面形状になっていることが重要となります。

また、加工する上でどうしても余長、材料の端部に曲げ代と言うものが必要となります。その余長をガス又はプラズマ切断した際に、熱影響で材料の収縮が発生しますので、断面形状が変化してしまう事があります。ですので、その辺りを全て計算の上で成形加工をしなければいけません。そのうえベルマウス曲線となりますので、難易度の高い成形加工となります。

その辺りの計算の具合というのは
職人さんが今までの経験から考えられていくものなのですか?

経験と言うより長年培った実績がありますので、そのような実績については、ある程度データ化することができています。また、原図展開者に於いても同様で、膨大なバックデータをもっていますので、両者のデータを持ち寄り、それを活用して物造りを行うと考えていただければと思います。ただ、細かなテクニックなどについては、職人の経験値や技能が必要となる場面も多々あります。

特に記憶に残っている難しい事例を教えてください。

角丸管については、非常に難易度は高いと思います。製品両端の一方が四角で、その反対の方向が丸状になっており、簡単そうに見えますが、形状を造り込む、正寸を狙うことが困難な製品であります。現在も継続してお客様よりご発注いただいていますが、初めて角丸管に携わった頃は、私も若い頃で、かなりの時間を要した記憶があります。

特に成形難易度の高いところは、角丸管の丸部のアール形状を付けていくことで、アール形状が同じでも曲げる長さが変化していますので、下金型を何度も取り替えて成形加工を行うパターンがあります。つまり、下金型が同じもので曲げると曲げる長さが長い部分はアール形状が浅くなり、短い部分は、深くなる現象が発生しますので、ネックとなります。

角丸管

鋼種の機械的性質として引張降伏点が高いので、上金型で加圧している箇所を作用点で材料と下金型が接触している部分を支点としますと一旦曲げてアール形状がついたとしても支点となっている部分のアール形状が伸びて浅く崩れる現象が起こります。

ある程度曲げていきますと90度に折れ曲がっていますので、曲げ戻れない箇所が発生します。また、平面の平坦部に膨らみが発生します。各位置での寸法がありますので、その辺りを計算して曲げていかなければならないところが非常に難しいです。

私の師匠については、技能・技量ともに素晴らしく、その世界では名の通った方でしたが、当初は大変苦労して成形をしていました。そのノウハウをしっかり分析をしてきましたので、今の若手社員は、当初と比較して加工時間は半分程度のスピードでできるようになっています。

「守破離」という言葉がありますが、熟練工がこれまでの技術やノウハウを若い世代へ伝承し、若い世代がしっかりその基本を守りながら、新たな技術に発展させる。伝承プラス改善でより良い物造りができていると感じています。

分割金型成形品の加工で北海鉄工所の強みはどんなところですか?

やはり分割金型成形品については、加工難易度は高いです。北海鉄工所では、このノウハウがしっかり伝承ができているので、スムーズな原図展開ができます。

また、加工に関しましてもお客様のご要望にお応えすることができ、法規物に関しても対応することができる体制が整っていることが北海鉄工所の特色で、原図展開だけでも加工ができなければ意味がないですし、組立工程、溶接工程については、最終的に溶接の歪が残らないようになど、それぞれの工程で計算の上で作業を行い、次工程のこと、最終のお客様のことを考えた物造りができるのが大きな強みだと考えます。

「伝承プラス改善でより良い物造りができていると感じています。」
西出幸博